五島つばき蒸溜所(GOTOGIN)で学んだ2週間|「日本一」のジン蒸溜所の裏側と、宇陀蒸留所へ持ち帰るもの

Aug 12, 2026

2026年7月末から8月上旬までの2週間、
長崎県・五島列島の五島つばき蒸溜所(GOTOGIN)で、
奈良県宇陀市で計画している宇陀蒸留所の立ち上げに向けた実地研修
をさせていただきました。

研修に行く前から、私にとって五島つばき蒸溜所は「日本一のジン蒸溜所」でした。

なぜそう感じていたのか。

販売数量なのかもしれない。メディアで目にする機会の多さなのかもしれない。ボタニカルを個別に蒸留し、原酒をブレンドして商品をつくり上げる「個別蒸留」という独自の製法なのかもしれない。

あるいは、GOTOGINというブランドそのものが持つ力なのかもしれません。

一方で、キリンビール出身の3人が立ち上げた蒸溜所ということもあり、豊富な経験やノウハウを持った、いわば「エリート集団」だからこそ実現できたのではないか、という思いもどこかにありました。

しかし、実際に2週間、五島つばき蒸溜所の製造現場に入ってみると、その印象は大きく変わりました。

華やかなクラフトジンブランドの裏側にあった、地道な製造現場

研修では、原酒づくり、試験蒸留、ジュニパーベリーやラズベリー、シナモンなどの個別蒸留から、ボトリング、打栓、ラベル貼り、ネックラベル、シュリンク、検品、梱包、出荷まで、実際のクラフトジン製造工程に入らせていただきました。

そこで最初に感じたのは、

「ものすごく、きっちりとしたメーカーだ」

ということでした。

ラベルを正確に貼る。シュリンクをきれいに仕上げる。そして完成した商品の中に異物がないか、一本一本、人の目で確認する。

一つひとつは決して派手な仕事ではありません。

しかし、商品として世の中に送り出す一本に対して、当たり前のことを当たり前以上にやる。

その姿勢が製造ラインの随所にありました。

さらに印象的だったのは、現在のやり方が最初から完成していたわけではないことです。

過去に起きた問題や失敗があり、その原因を考え、改善し、それが現在の工程や設備、品質管理へと反映されている。

作業を教えていただくたびに、「どうやるか」だけでなく、「なぜこうしているのか」「以前はどうしていたのか」「何が起きて現在の形になったのか」まで説明していただきました。

品質とは、こだわりという言葉だけで生まれるものではなく、失敗と改善を仕組みに変えていくことでつくられる。

これは今回、強く感じたことの一つです。


個別蒸留から学んだ、ジンを「商品開発」としてつくること

ジンづくりについても、大きな学びがありました。

五島つばき蒸溜所では、ジュニパーベリーをはじめとする原料ごとに蒸留条件を調整し、それぞれの原酒をつくります。

そして、その原酒をどのような割合で組み合わせれば、目指すコンセプトを液体として表現できるのかを細かく検証していく。

そこにあったのは、単なる職人的な感覚だけではありませんでした。

コンセプトを設定し、仮説を立て、試作し、テイスティングし、評価し、調整する。

飲料メーカーの商品開発そのものともいえる、緻密なプロセスでした。

同時に、テイスティングでは、それぞれが感じたことを率直に伝える。

良いジンをつくるためには、一人の優れた蒸留家だけではなく、異なる感覚を持った人たちが率直に意見を交わせるチームも必要なのだと感じました。

品質には厳しく、人には柔らかく。蒸溜所のカルチャー

もう一つ印象的だったのが、五島つばき蒸溜所の空気です。

品質に対しては妥協しない。

しかし現場は張り詰めているわけではなく、会話があり、笑いがあり、とても柔らかい。

創業メンバーから社員、パートの皆さんまで、それぞれが役割を持ちながら、一つのチームとして蒸溜所を動かしていました。

会社のカルチャーは、理念を掲げるだけではつくれない。

創業者やそこで働く人たちの日々の振る舞いそのものが、少しずつ会社の文化になっていく。

これは、自分がこれから奈良・宇陀で蒸溜所と組織をつくっていく上でも、大きな学びになりました。

五島つばき蒸溜所を「日本一」だと感じた理由

創業計画では月800本を想定していた販売量が、現在では月5,000本規模へ。

開業からまだ約3年半。

外から見れば、順調に成長した華やかなクラフトジンブランドのストーリーに見えるかもしれません。

しかし、その内側にあったのは、水、設備、製造、品質管理、商品開発、採用、組織、販売、広報。

一つひとつの課題に向き合い、試し、失敗し、改善してきた積み重ねでした。

広報についても同じです。

メディアに取り上げられるのを待つのではなく、何をニュースにするのかを考え、届ける相手を考え、実際に一件一件アプローチする。

戦略的でありながら、実行は驚くほど泥臭い。

大阪へ戻ってから、早速この学びを実践しました。

2026年9月に大阪キタで開催する「関西ジンラリーLAB 2026」のプレスリリースをつくり、正式発表に先立って約30媒体へ個別にアプローチしました。

五島での学びは、すでに自分の行動を変え始めています。

蒸溜所づくりで持ち帰るのは、五島の「答え」ではない

今回の研修で特に大きかったのが、創業者の門田さんから、創業に至った背景、実際の創業計画、スピリッツ製造免許、採用や組織づくり、商品開発などについて、実践的な話を伺えたことです。

蒸留設備や製造レイアウト、水源管理についても、現在の姿だけでなく、「なぜそうなったのか」という過程まで包み隠さず教えていただきました。

そこで気づいたことがあります。

僕が五島から持ち帰るべきものは、五島つばき蒸溜所の「答え」ではありません。

その答えにたどり着くまでの、考え方です。

五島と宇陀では、土地も、規模も、人も、目指すものも違います。

だから同じ蒸溜所をつくる必要はありません。

五島で学んだ考え方を自分なりに解釈し、奈良県宇陀市で計画する宇陀蒸留所に実装する。

今回の2週間を経て、自分がどんなジンをつくりたいのか。どんなブランドをつくりたいのか。どんな蒸溜所にしたいのか。そして、それをどう世の中へ届けていくのか。

その解像度が一気に上がりました。

五島から奈良・宇陀へ。宇陀蒸留所で実践する

蒸溜所を開業することがゴールではありません。

スピリッツ製造免許を取得し、蒸留機を設置し、最初の一本のジンをつくる。

そこからが、本当のスタートです。

五島で学んだことを一つずつ宇陀で実践し、商品を磨き、ブランドを育て、事業として続けていく。

そして、自分がこれまで育ててきた「関西ジンラリー」も、さらに大きなコンテンツへ育てていきたいと思っています。

いつかGOTOGINと一緒に何かをやりたい、ではなく、

「一緒にやろう」と思ってもらえる存在になる。

来年、五島つばき蒸溜所の皆さんが宇陀を訪れてくださる頃には、

「あの2週間で学んだことを、宇陀ではこう実装しました」

と、実際の蒸溜所とジンを前にして伝えられるように。

五島つばき蒸溜所の皆さま、本当にありがとうございました。

五島から、宇陀へ。

ここから実践していきます。